雨上がりのビルの谷間を抜ける風が、少しだけ金属の匂いを運んでいた。会社帰りの私は、濡れた歩道に伸びる街灯の影を眺めながら歩いていた。胸の奥で何かがざわついていて、理由を考えるのが面倒で、そのまま飲み込んだ。 「相沢さん?」背後から呼ぶ声に足が止まった。振り返ると、同期の広瀬が、ネクタイを緩めたまま立っていた。彼はいつも落ち着いた調子で、人の反応をよく観察する癖がある。 「今日、早いね」少し息を整えながら彼が言う。 「いろいろあってね」曖昧に返すと、彼は眉を寄せた。 会社では言っていないが、今夜、三年付き合った婚約者から一方的に話を切り出された。まだ言葉に変える気になれなかった。喉の奥に重たい石が詰まっているようで、声が乾いていた。 広瀬は私の顔を一瞬だけ見つめ、視線をそらした。「……無理してない?」 「してないよ」答えると、彼は小さく息を吸った。 歩道に落ちた水たまりが、ビルの光を乱反射させていた。その光が揺れるたび、胸の中で整理しきれない何かが揺れた。 「もしさ」広瀬はポケットに手を突っ込み、言いにくそうに続けた。「帰り道、少し遠回りしてもいい?」 理由は言わなかった。ただ、その声の温度だけがいつもと違っていた。 私はほんの一拍置いてからうなずいた。風が二人の間を抜け、薄い紙のような匂いを残していった。 ビルの角を曲がる前、ふと足元に落ちていた細い銀色のリングに目が留まった。誰かの失くし物だろうか。なぜか手を伸ばす気になれず、そのまま歩き出した。 広瀬が何を話そうとしているのか、まだ分からない。 でも、曲がり角の先に、少しだけ違う夜が待っている気がしていた。
角を曲がると、車の流れがやわらいで、街の音が少し遠くなった。舗道のタイルに残った雨の粒が、スニーカーの底で細かく砕ける。その感触だけが、今の自分を現実につなぎとめていた。 「ここ、さ」広瀬が歩みを緩めた。「よく来るんだ。なんとなく落ち着く」 古い喫茶店の前だった。窓越しに見える淡い灯りが、雨に濡れたガラスの向こうで揺れていた。 「入る?」と彼は言ったが、目は私をじっと見ない。少しだけ耳のあたりを触る癖が出ていた。 「外でいいよ」私は屋根の下に立ち、鞄の紐を握り直す。皮が湿気を含んで、いつもより重たかった。 広瀬は横に立ち、深く息を吐いた。「……さっきさ、顔色が違ったから。話せなくてもいいけど、放って帰す気になれなくて」 「大げさだよ」そう言ったのに、声は軽くならなかった。喉の奥の石は、まだ形を変えずに居座っていた。 広瀬はしばらく黙った。雨上がりの匂いが微かに流れ、その中で彼の指先がわずかに震えているのが見えた。 「今日、さ」彼は低く言った。「相沢さんに渡すはずだったものがあったんだ」 「渡すもの?」思わず向き直る。 広瀬はポケットに手を入れたまま動かない。まるで、取り出す勇気を探しているようだった。 「でも……今は違う気がして」彼は目を伏せた。「タイミングって、難しいね」 その言い方が妙に胸に引っかかった。遠くの交差点で信号が変わり、車のライトが赤い帯を引いて流れていった。 彼が渡そうとしていたものは何なのか。 問いかけようとした瞬間、喫茶店の扉が内側から開き、かすかなベルの音が夜に滲んだ。 その音にかき消されるように、広瀬は小さく息を呑んだ気がした。
扉のベルが落ち着くと、店内から温かいコーヒーの匂いが漏れてきた。少し焦げた香りが湿った空気に混ざり、胸の奥のどこかを刺激した。 「……さっきの続きだけどさ」広瀬が言う。指先でポケットの縁をいじりながら、視線は路面の水跡を追っていた。「本当は今日、渡すつもりだった」 私は息を整えた。「それって、何?」 広瀬は答えず、ためらうようにポケットから小さな紙片を半分だけ引き出した。暗い中でも白い角がわずかに光る。何かの受付票のようにも見えたが、彼はすぐ指を戻し、隠すように握り込んだ。 「まだ…違う」彼は首を振る。「今の相沢さんに渡したら、きっと困らせる」 言葉の意味が掴めず、喉の奥がきゅっと締まった。 「困るって、どうして?」 「だって…」広瀬は一瞬だけ私を見た。目の奥で、何か言いかけてやめた気配が揺れた。「今日は顔が…無理してる感じだったから」 顔を触ると、指先が冷たかった。 その沈黙を破るように、喫茶店の店員が「どうぞ」と笑って頭を下げた。店内の灯りが私たちの足元をほのかに照らす。 広瀬は扉の前で立ち止まり、低く言った。 「…でも、いつか渡すよ。これだけは決めてる」 再びポケットの中で紙片がかすかに擦れた。 その音が妙に耳に残り、私は一歩だけ店の陰に寄った。 何が書かれているのだろう。 聞けないまま、夜の空気がそっと温度を変えた気がした。
店先の灯りが落ち着いた色に変わり、歩道の濡れた石がそこだけ柔らかく見えた。冷えていたはずの指先が少しだけ温み、私は鞄の紐を握り直した。 「今日は、入らないんだよね」広瀬が言った。 「うん。ちょっと…落ち着かなくて」 そう答えると、広瀬は小さくうなずいた。いつもの癖で、耳の横を指で軽く押す。 「じゃあ、少し歩こうか。遠くまでは行かない」 その声はどこか慎重で、私の足取りを探るようだった。 ビルの裏手の細い坂に入ると、途端に空気が薄くなった気がした。夜風の中に、洗い立ての布のような匂いが混じっていた。 広瀬はポケットに手を入れたまま、歩幅を私に合わせてくる。 「今日さ」彼がふいに言う。「相沢さん、指輪…してなかったよね」 胸の内側がひりついた。 「気づいてたの?」 「うん。朝から。触れていいのか分からなくて」 彼の靴が路面の砂を踏んで、小さく鳴った。 「聞かないの?」 「相沢さんが話したくなるまで、聞かない」 その言い方が妙にまっすぐで、私は少しだけ目線を落とした。 坂を上り切ったところで、古い電話ボックスが見えた。中には誰もいなくて、ガラス越しに街の明かりが散らばっていた。 広瀬は立ち止まり、少しだけ呼吸を整えた。 「…実はね」彼が言った。「あの紙、捨てようと思ったんだ。今日」 私の足が止まった。 「なんで?」 「弱気になった。今の相沢さんに渡したら、重いかなって」 彼の視線は電話ボックスに向いたまま動かない。 「でもさ」彼はポケットの中で握った何かを、そっと持ち替えた。「捨てようとした瞬間、できなかった。理由は…まだ言えない」 ガラスに映る街の明かりが揺れ、彼の横顔に淡く散った。 その光景が胸の奥でゆっくり広がり、息を吸い込むと、湿った夜気がひんやり喉を滑った。 私たちの間に言葉の置き所が見つからないまま、電話ボックスの古いランプがぱちりと点滅した。 その瞬間、胸のどこかで薄い膜がわずかに震えた。 広瀬はまだ、手の中身を見せようとしなかった。 けれど、次に何かが動き出す気配だけは、確かにそこにあった。
電話ボックスのランプは、しばらく不規則に瞬き続けた。古い機械の癖なのだろうが、その明滅が、広瀬の躊躇を代弁しているように見えた。 「……もう少しだけ歩こうか」 彼がそう言って坂の先を指した。私は黙ってうなずく。 道の先は住宅街に向かう細い並木道で、雨粒を含んだ葉が、街灯の光を吸って淡く輝いていた。アスファルトから立ち上る湿気が足元にまとわりつき、靴底が少し重たく感じた。 広瀬は、しばらく何も言わなかった。歩くたび、ポケットの中で紙が擦れるかすかな音がした。その音だけが、私の呼吸のリズムを乱した。 「さっきのさ」 広瀬は急に足を止めた。並木の影が彼の表情に薄い縞を落とす。 「渡そうとしてたもの……もう隠せないかもしれない」 胸の奥が一瞬だけ詰まった。 「見せてよ」 自分でも驚くほど静かな声が出た。 彼はゆっくりとポケットから紙片を取り出した。湿気を吸った角が、少しだけ丸くなっていた。 差し出されたそれを手に取った瞬間、指先に微かな震えが伝わった。 印字された文字を見た途端、呼吸が止まる。 そこには、私の名前があった。 そして、その横に見慣れない肩書きが添えられていた。 研修参加者用の受付票だった。しかも—— 「海外?」 声がかすれた。 広瀬は、眉の端をほんの少し上げた。 「推薦したの、俺なんだ。相沢さんなら行けると思った。でも……今日のことがあって、渡すのが怖かった」 夜風が、二人の間の紙をふわりと揺らした。 「驚いたよね」 彼は苦い笑みを浮かべた。「でも、これ……ずっと渡したかった」 私の手の中で紙が震えていたのは、風のせいだけではなかった。 言葉を探す間、広瀬がそっと視線を落とした。 「もし、迷惑だったら……捨てていいよ」 その一言が、思っていた以上に胸に響いた。 捨てる。 その二文字が、なぜか遠くに感じられた。 紙を見つめながら、私は次の言葉を決めきれないまま、ゆっくりと息を吸った。 並木の葉が静かに揺れ、街灯の光がその影を細かく散らした。 この先、何かが変わる気配だけが、確かに夜気の中に漂っていた。
並木道を抜ける風が弱まり、紙片の震えがようやく落ち着いた。私の掌には、まだその温度が残っていた。 「それって……どういうこと?」 声は思ったより低く出た。追及というより、ただ確かめたかった。 広瀬は一度だけ肩をすくめ、歩道の端に視線を落とした。 「相沢さん、最近ずっと無理してたろ。俺、何もできなくてさ。だから…少しでも違う景色を見られたらって思ったんだ」 並木の影がゆらぎ、彼の横顔に細い線を落とした。 「別に、海外行けって押しつけたいわけじゃない。ただ……相沢さんが、誰かに決められるんじゃなくて、自分で選べる場所を持ってほしかった」 私は紙を見下ろした。名前の横の文字がじわりと重くなる。 「でも、どうして私に?」 問いかけると、広瀬の足がわずかに止まった。 「……見てきたからだよ。三年も誰かの隣で気を遣って、それでも笑って仕事してたの。そういう人、たぶん放っておけなかった」 彼は耳の横に触れる癖を出し、視線を逸らした。 「本当は、今日全部話すつもりだった。でも、指輪してないのを見て……違う意味に聞こえたら嫌だなって思った」 言い返す言葉が浮かばず、呼吸だけが静かに上下した。 紙の端を指で触ると、湿気がそこに薄く残っている。 「選ぶのは相沢さんだよ」 広瀬はそう言って、少しだけ笑った。 「俺の気持ちを説明するとしたら……その紙の裏に、書いてある」 裏? そっとめくろうとした指が、夜気の中でわずかに震えた。 裏面に何があるのか、まだ見えないまま、視界が静かに揺れた。
紙を返す角度を変えると、裏面に細いインクの線が見えた。 最初は印刷の汚れかと思った。けれど、指で押さえると、手書きの筆圧がわずかに沈んだ。 「……これ、広瀬が書いたの?」 息が浅くなる。 「うん。でも、見ない方がいいかも」 広瀬は歩道の縁を軽く蹴り、目線を落とした。「勢いで書いたからさ。今読むと、たぶん変だよ」 ためらいながら文字を追った。 そこには、推薦理由の欄がほぼ埋め尽くされるほど、小さな文字が並んでいた。 『相沢さんは、会社より先に誰かを気にする。 でも、そのぶん自分を後回しにしすぎる。 誰かに振り回される人じゃなくて、自分で場所を選べる人だと思う』 最後の一行だけ、少し掠れていた。 『もし迷ったら、この紙を捨てずに見せてほしい。 その時は——一緒に考えたい』 胸の奥がじんと熱くなり、呼吸を整えるのに数秒かかった。 「……広瀬、これ」 声が途中で途切れた。 彼は耳元を触りながら、小さく笑った。 「だから言ったろ。重いって。相沢さん、今日しんどそうだったし。タイミングじゃないと思った」 紙を握る指先がわずかに強くなる。 その時、並木の向こうで誰かの足音が近づいた。 湿ったアスファルトを踏む、急いだ気配。 視線を向けると、街灯の下で立ち止まった影があった。 見覚えのある肩の線。 思わず息が止まった。 名前を呼ぶ前に、その人が言った。 「……相沢。少し、話せるか?」 夜気の温度が、すっと変わった気がした。
足音の主は、元婚約者の高木だった。 スーツの袖が雨を吸って、少し重たげに見えた。呼吸が早い。ここまで走ってきたのだと分かった。 広瀬は、一歩だけ私の横から退いた。けれど距離を空けすぎることはせず、気配だけそばに置いたままだった。 「……何?」 自分の声が思いのほか落ち着いていて、少し驚いた。 高木は視線を彷徨わせてから、私の手元にある紙に気づいたらしく、僅かに眉を寄せた。 「それ、仕事の……?」 言いかけて、彼は首を振った。 「いや、今はそれじゃない。今日、急に指輪を外して出ていったから……。誤解だと思って、ちゃんと話したくて来た」 広瀬の指が、ポケットの中で小さく動いた。 私は紙を胸元で押さえたまま、高木の顔を見た。 街灯の光が彼の表情を斜めに切り取り、疲れた目元だけが際立つ。 「誤解って、何の?」 問いかけると、高木は呼吸を整えながら続けた。 「例の件だよ。あの後輩の子、俺に頼んできただけで……変な噂みたいに聞こえただろ。でも違う。ちゃんと説明したい」 声の端に焦りが滲んでいた。 昔なら、その色にすぐ折れていたかもしれない。 でも今は、胸の中で別の重みが静かに存在を主張していた。 手の中の紙だ。 指を動かすたび、裏面の言葉がじんわりと思い出される。 「今ここで、話すの?」 そう言うと、高木は少しだけ黙り、視線を落とした。 その沈黙が以前より重く感じる。 並木を揺らす弱い風が三人の間を抜け、乾ききらない葉の匂いを運んだ。 広瀬が、ほんのわずかだが私の方へ体を寄せた。 言葉は発さない。ただ、その気配が「相沢さんが選べばいい」と言っているようだった。 高木は顔を上げ、静かに息を吐いた。 「……少しでいい。俺の話を聞いてほしい」 その声に、何かが微かに揺れた。 けれど揺れた分だけ、紙片の角が指先にしっかり触れた。 この先、どちらへ歩くのか。 その選択の気配だけが、夜の空気をゆっくり満たしていった。
高木の言葉が並木の間に沈み、空気がわずかに冷えたように感じた。 私は紙を指先で押さえたまま、ゆっくりと息を整えた。 「……高木、ここじゃ話せないよ」 そう言うと、彼は困ったように眉を寄せた。 「じゃあ、少し歩きながらでも——」 そのとき、広瀬が静かに口を開いた。 「相沢さん、無理しなくていい。聞きたいなら俺は待つし、帰るなら送るよ」 声は淡々としていたが、耳元に触れる癖が一度だけ出た。 それが、彼の緊張を隠しきれていない証拠だった。 高木がその仕草に気づいたのか、わずかに視線を鋭くした。 「……君、前から相沢にこういうことしてた?」 問いというより探りだ。 広瀬は返事をせず、代わりに私へ目を向けた。 その視線に触れた瞬間、胸の奥で何かがきしりと音を立てた。 指先の紙が湿った夜気を吸って、じんと重くなる。 「高木」 私はゆっくり彼を呼んだ。 「もし誤解があるなら、ちゃんと聞く。でも……今じゃない」 高木は息を呑んだようだった。 「どうして。俺より、そっちを——」 言いかけた声が途切れたのは、私が紙を胸元に戻したからだ。 広瀬が書いた文字の感触が、薄い布越しにまだ残っていた。 「自分のこと、少し整理したいの」 そう続けると、高木の肩がわずかに落ちた。 沈黙が三人の間に落ち、並木の上を風が通り抜けた。 そのときだった。 私のスマートフォンが震え、画面に社の緊急通知が浮かび上がった。 『例の海外研修、参加枠の変更について至急確認』 一行の文字が、夜の空気を静かに塗り替えた。 広瀬が小さく息をのみ、高木が目を細めた。 手の中の紙が、別の意味を帯びていく。 何かが大きく動き出す予感が、足元のアスファルトを伝って、ゆっくりと私の体に広がっていった。
緊急通知の光が、並木の影に淡く跳ね返った。 私は画面を閉じ、胸元の紙の感触を確かめた。湿った夜気の中で、それだけが温度を持っていた。 「……行くのか?」 高木が押し出すように聞いた。声の端が震えていた。 「まだ分からない。でも——」 言いかけて口を閉じる。言葉より先に、胸の奥で何かが形になりつつあった。 広瀬が、少しだけ前に出た。 「相沢さん。もし、行くって決めたなら……俺、ちゃんと送り出す。戻ってきたい時は、戻ればいい」 耳元に触れる癖がまた出て、それを自覚したのか、彼は小さく息を吐いた。 高木が顔を上げた。 「俺は……もう一度やり直したい。あの話は本当に誤解で——」 言葉が並ぶほど、胸に重たく落ちてきた。 誤解かどうかより、私はずっと、自分の意思を後回しにしてきた。 その癖の重さを、ようやく自分の中で触れられた気がした。 胸元の紙を取り出す。 裏面に並ぶ小さな文字が街灯の下でぼやけ、指先にじんと沁みた。 『自分で場所を選べる人だと思う』 その一行が、まるで薄い膜を破るように響いた。 「高木、ごめん。今日は帰るね。話の続きは……たぶん、もうしない」 自分でも驚くほど静かな声だった。 高木は短く息を呑み、視線を落とした。 並木の葉がわずかに揺れ、夜の匂いが変わった。 私は紙を広瀬へ向け、ためらいながら言った。 「……これ、捨てないでおく。まだ答えは出てないけど。自分で選びたいから」 広瀬は目を細め、ほんの少しだけ笑った。 「うん。そう言うと思った」 声が低く揺れ、耳元への癖が消えていた。 三人の影を街灯が引き伸ばす。 その中で、私だけの足元に、小さく折れた葉が落ちた。 踏むと、乾ききらない感触がわずかに伝わり、妙に確かだった。 研修に行くかどうかも、広瀬との距離も、まだ分からない。 ただ、今の自分は誰かの影に合わせて立っていない。 その実感が、夜風の奥で静かに灯った。 「行こっか、相沢さん」 広瀬の声にうなずく。並木の出口へ歩き出すと、背後の足音が遠ざかった。 濡れたアスファルトが、街の光を細く裂いていた。 その光の先に、まだ見たことのない景色が、薄く滲んでいた。
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